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雑多な日記

  • 国際線で見た映画について

    最近院生になって初めての海外出張なるものに行ってきまして、その間の国際線で大量に映画を見たのでそれらについて簡単に感想を残しておきます。

    見た映画は往復合わせて以下の通り。

    1. マインクラフト/ザ・ムービー
    2. 366日
    3. 怪獣ヤロウ!
    4. イエスマン “YES”は人生のパスワード
    5. トゥルーマン・ショー
    6. ジョーカー

    以下各々の感想です。あとちょっとネタバレをするかもしれません。

    マインクラフト/ザ・ムービー

    コンピュータゲームの金字塔であるマインクラフトを題材にした映画です。登場人物たちがマインクラフトの世界に潜り込んでしまって、その世界の敵が現実世界を征服しようとしていることを登場人物たちで阻止するという超王道ストーリーです。

    行きの飛行機は離陸後やたら揺れる区間を通ったので、そのときに揺れが怖くてコメディを見ようと思ってみた作品として結構覚えてます。多分一度映画館で見たことがあるのですが、その時期は色々あって記憶そのものがほぼ飛んでいるので、ほぼ初見のつもりで見ました。

    おっさん2人がバカ騒ぎする作品で、頭を空っぽにしてみると元気が出ます。ただ内容的な深みがあるような作品ではないので、それ以上の感想は出ません。勢いだけの作品ですが、勢いがすごいので面白いです。個人的には機内で見た作品の中で一番見る前の期待値を上回りました。

    366日

    主演が赤楚衛二、ヒロインを上白石萌歌が演じる恋愛系の映画です。なぜか存在だけ知ってたので見ました。沖縄で高校生のときに出会った2人の20年弱くらいの恋愛模様を大学や社会人での環境の変化とともに描いています。ちなみにタイトルの366日という部分は物語では複数の意味を持ち、話すと長くなるのでここでは述べません。

    結末を一言で述べるのが非常に難しい作品でした。この表現自体が正しいのか自体が議論の余地があると思いますが、御幣を恐れずに言語化すれば登場人物全員がベストな状態にはなってないですが、それなりに幸せな形で落ち着いていきました。また結末のみならず、この映画にはある意味”悪役”のような人がおらず、登場人物はみんな常識的な感性をもっているので、誰に対しても共感ができる分、だれか一人の視点に立った分析をすることができず、総評も難しいと思います。ただしその分、恋愛の描写はとてもリアルで、多くの人が実体験と重なる部分を見ることができるのではないでしょうかという感じです。

    この作品は理解が非常に難しいのでこれ以上私からの評価は避けたいです。むしろ他の人に見てもらってちょっと感想を語り合いたいくらいなのですが、ここでは一言だけ個人の経験に絡めた感想を述べておくと恋愛ってタイミングが大事なんですねというのはすごく思えました。

    怪獣ヤロウ!

    バキ童が主演の映画です。市役所職員のバキ童が町興し企画で映画を作るという作品です。

    名前だけ知っていたのと、バキ童のイメージから勝手にコメディ映画だと思ってたのですが意外と真面目な映画でした。そのため、最初の想定とちょっとギャップがあって個人的には期待していたほどでもなかったという印象です。行きの便で見たので、もうあまり記憶にも残っていません。

    イエスマン “YES”は人生のパスワード

    原題は “Yes Man”。さえない銀行マンが怪しい宗教団体に唆されて何事にも「Yes」と答えるようになったことで人生が変わっていく様を描いたコメディ映画です。

    これも存在だけ知っていたので見たのですが、まあ可もなく不可もなくといった感じでした。こちらも特に印象に残っていないのでこれ以上語ることなしです。

    ただ強いて言えば、途中でポジティブになりすぎた主人公がやっていた、当日に空港に行ってその場で行ける便を買ってノープランで海外旅行するというの一度くらいやってみたいかもしれない。(笑)

    トゥルーマン・ショー

    自分の人生がテレビ中継され続け、親も友人も妻もテレビ局が用意した役者であることを知らないまま生きていた主人公トゥルーマンが、過去に死んだはずの父親にそっくりの人が町中を歩いていたことから違和感を覚えて、自身を取り囲む世界の仕組みについて気が付いていく物語です。

    私自身そこまで詳しくないが、映画界隈で非常に評価の高い作品だと認知していたので見てみました。確かに面白かったが、映画評論家の方々が世界観の斬新さ以外にどういう点を評価しているのかはあまりよく分からなかったというか、世界観の奇抜さを除けば後は普通のコメディ映画のように個人的には思えました。もっとも普通に面白かったですが、最初の期待値が高かった分こんなものかという感じはしました。

    あと個人的な要望を言えばシルビアとの再会は描いてほしかったな!

    ジョーカー

    ホアキン・フェニックス主演のバットマンの悪役ジョーカーを題材にした作品です。バットマンは知らなくても全く問題なく見れます。ストーリーとしては売れないコメディアンのホアキン演じるアーサーが友人の謀略や自分の出生の真実を知っていく中で世界に絶望していき闇落ちするという話です。

    5年くらい前に大ヒットした作品なので一度見てみたいと思ってみました。こちらも366日と同様に作品を総評するのが非常に難しいと感じましたが、366日で述べた感想とは逆に登場人物はほぼ全員性格がねじ曲がったろくでもないやつです。一切のホラー要素はなかったですが、常に暗澹とした雰囲気が漂った映画で、感想としては怖いというか、見た後の気分はすこぶる鬱っぽくなってしまいました。

    恐らく映画の質としては、今回挙げた作品で一番高いと思いますが、正直二回目は見たくないかな、、

  • 8番出口を見ました

    シンプルに飽きてきて更新をしていなかったので久しぶりの更新になりました。映画「8番出口」を見たのでその感想を書きます。

    映画の概要・総評

    まずあまりネタバレなしで概要と総評を書きます。

    恐らく2年くらい前に流行ったインディーゲームを原作にした映画です。元のゲームは東京メトロのような地下鉄の駅の通路で間違い探しを行うという感じで、間違い探しを連続して正解していき8番出口にたどり着くことが目的という非常にシンプルなゲームです。このゲームでは間違いのことを「異変」と呼びますが、想像の斜め上をいくような異変が日常的に見慣れた地下鉄の駅で出現するという日常と非日常が巧妙に交わる独創性が評価され、やたらバズっていたので知っている人も多いと思います。

    さて、映画自体は基本的には原作のゲームの世界観を踏襲しながら、プレイヤーやキャラクターの背景事情を盛り込んで物語テイストに仕上げており、映画から入る人でも楽しめるといった感じでした。二宮和也さんや小松菜奈さんといった豪華な人材を起用しておきながら、インディーゲーム特有のこじんまりとした感じを残したB級映画のような体裁を保っており、この辺りのバランスも好感が持てました。また、ホラー要素も多く映画館で見ることで没入感がより実感できるので、ぜひ公開されているうちに見に行ってみてください。

    総じて個人的には知人に勧められるくらいには面白い映画でした。

    感想

    ここからはネタバレありきで思ったことを色々と感想を書きます。

    結局真相は分からない

    これはB級映画あるあるだと思いますが、不思議な世界に迷い込んで主人公が何かするというパターンの場合、大抵その不思議な世界がどうして存在して、どういう仕組みで機能しているのかといった設定は分からず仕舞いになってしまう気がします。今回もこの例に漏れず、結局8番出口の迷路はどういうからくりなのか、人間ではなくなったおじさんはこれからどうなるのか、おじさんの前の通行人だったお姉さんは何者かといった数多くの謎が残ったままです。まあこういう部分を補って自分たちで考えてみるというのが面白かったりするので、これはこれで良いと思いますが、ゲームのメタ的な世界観については一切分からず仕舞いといった感じでした。

    映画特有の異変が素晴らしい

    ゲームから脱却して映画らしさを出している箇所が何か所かあって、良い構成だなと思いました。特に主人公が元カノからの電話で、元カノとの子どもを元カノのよりを戻して一緒に育てていくべきか葛藤しているときに実はその電話そのものが異変だったという演出は不気味さを感じました。8番出口の迷宮に迷い込んでから電波が通じなくなるという設定があったので、電話がかかってくること自体がおかしいと言えばおかしいので予想はできていたのですが、それでも演出のおかげで普通に驚かされました。

    子どもの存在について

    結局8番出口に迷い込んだ子どもは主人公と元カノとの子どもということで良かったのでしょうか?出てきた段階から察しはついていましたが、それでもおじさんとの関係やなんでずっとあそこで迷っていたのかなど疑問が数多く残ります。また、やたら察しが良く間違いを見つけてくるのも不思議です。最後に子どもとニノが別れたのは、これから子どもの方は母親のもとに帰ってこの世界に生まれてくるのかな?とか、だとすると8番出口のある迷宮は生前の人間の魂が迷い込んでくるところなのかな?とか、もしニノが元カノと縁を切る、あるいは中絶をさせるような選択肢をとった場合あの子どもはどうなっていたのかな?など様々な疑問が残ります。

    余談

    本当にどうでもよい余談なのですが、最後の津波のシーンで二宮和也と小松奈々が海辺で子どもと過ごすシーン(幻想?)がありましたが、その直前の波の引くシーンでWindowsの壁紙を思い出してすごいデジャブ感を覚えました。

  • 読書日記「種をまく人」

    Paul Fleischman の 「種をまく人」(原題:Seedfolks) を読みました。いわゆる児童文学に属するような作品で、分量もそこまで多くないので誰でも気軽に読めると思います。

    読んだきっかけ

    もともと中学校の国語の教科書に収録されていた作品で、突然その中の一節を思い出したので読みたくなって探しました。幸いなことに文京区の図書館にはおいてありましたので、そこで借りて読みました。

    本のあらすじ

    クリーブランドというアメリカのオハイオ州にある都市のある通りを舞台にストーリーが進行します。少女が街角の一角にある空き地にまいた種がやがて町の人々を巻き込み、人々の人生を豊かにしていきます。また、町に住んでいる様々な人々を語り手にして進んでいく群像劇のような形態をとっています。

    感想

    内容もそんなに難しくなく、すっと入ってきて面白かったです。クリーブランドのストリートの一角にある空き地という舞台が共通していて、それが色々な視点から語られるという展開により、各個人が特別視されずにあくまで町の一住人であることが意識されて、街そのものに焦点が当たっている感じがあり、構成の巧みさが感じられます。上手に言語化できませんが、東京で夜に一人で歩いているときに感じるような人がいるのに誰にも見られていないように感じられる孤独な世界観と言うんでしょうか、そういうものが感じられて人によってはとても好きになるはずです。

    実際私も読み終わって、雰囲気が良くて面白かったし、こういうエピソードがあったね、というものは思い出せるんですが、誰の話がどういう順番であったかとかは全く思い出せません。一度はその人の視点に立って物事を見たはずなのに結局は他人であり、私自身が町の住人ではなく町そのものを見ていたということでしょうか。それを読み終わって気づいたときにはちょっとした衝撃を受けました。本当に群像劇が良くはまっている作品だと思います。

    また、私はアメリカに行ったことはないのでどれくらい事実に即しているのかは分かりませんが、児童文学の割にはアメリカの多様性ゆえに人種や階層の差異が意識される描写がリアルでした。子どもの読書感想文に採用する際にはその点がちょっと悩ましいところでしょうか。

  • 介護等体験に行ってきました

    現在大学の教職課程を通して小中学校の教員免許を取得するためには社会福祉施設に5日間、特別支援学校に2日間の研修に行く必要があります。私も中学校の教員免許を取得しようと考えていたので、先日社会福祉施設の方に5日間行ってきました。あまりこういう体験を書いている人もいないので、せっかくなのでそのときのことを書いてみました。

    …と言いながら半分くらいご飯のことを書いています。業務内容とかそういう話が気になる方はここまで飛ばしてください。

    感想

    昨今の教員不足が叫ばれる世の中で、すべての教員にとって必要な業務であるわけでもない介護や福祉の実習を、お金を払ってまでする必要があるのかと言われると、恐らく大方の人間は非合理的で不必要な制度であるという見方をすると思います。

    僕も正直言ってあまり意味のない制度だとは思っていますが、一方でやってみてまあ良い体験ができたかなと思いました。もちろん積極的にやってよかったとは思えませんが、それでも決して無駄ではない貴重な体験にはなったという程度です。教員免許の取得に必要でなければ絶対にやっていません。

    昼ご飯が美味しかった

    最初から脱線しますが…介護等体験と言いながら5日間で最も楽しめたのはお昼ご飯でした。東十条という昔ながらの商店街がある街の施設に行ったので、お昼ご飯の時間は商店街にある個人経営のお店を同じ実習生の方と散策してとても良い体験ができました。介護等体験どうだったと聞かれて、真っ先のご飯が美味しかったという感想が出てきてしまいそうなくらい楽しかったです(笑)

    せっかくなので行った店を紹介しておきます。

    興隆 (中華)

    もともと翌日に行くお蕎麦屋さんが臨時休業で閉まっていたので訪れました。安価かつボリュームがあって、味も美味しかったですが、昼間から大量の揚げを食べると午後がきつすぎたので老いを感じました。ちなみに写真のから揚げは恐らくカレー粉が味付けに使われていて、パンチが効いてました。

    一東菴(お蕎麦)

    色々な産地のお蕎麦を頂きました。産地によっておそばの味が微妙に違って、それらを食べ比べできて面白かったです。店内も初夏の雰囲気を想起させ、酷暑を忘れさせてくれるような静謐さがあり良かったです。

    Bistrattoria (フレンチ, イタリアン)

    ご夫婦で経営されているフレンチとイタリアンを扱ったお店です。とても量が多いわりに良心的な価格で美味しかったです。写真は豚の肩ロースのソテーです。この他にも食後のデザートが充実していて、私はクレープを頂きましたが、こちらも美味でした。

    PAN (洋食)

    こちらでは似たような感じですが豚ひき肉のソテーを頂きました。パンが焼き立てで美味しかったです。すごく人気のお店なのか、お昼早めに行ったので席を確保できましたがすぐに満席になってました。こちらも価格が良心的です。

    業務内容について

    ようやく本題ですが、実習先で何をしたのかについてです。最初に前提を述べておくと、私は東京で実習をしたので、比較的人手は足りているのか、いわゆるホワイトなところで実習をしたと思います。地元の話を聞く限りだと、田舎ではもっと人手不足が深刻で、実習生にも人手不足を補うために重労働が課せられるという話も聞きます。

    私はデイサービスセンターに実習に行きましたが、そもそも実習生みたいな介護ど素人には提供可能なサービスが法律により相当の制限をされており(例えば車椅子を押すことすら法律上はだめらしい)、そこまで多くの種類の仕事ができません。施設の方から見てもお客様扱いといった感じでしょう。なので、基本的には利用者のおじいさん、おばあさんにお茶くみをしてコミュニケーションをとるといった感じでした。慣れてくると利用者さんとの話もパターン化できるようになってきて、だいたい以下の感じで話してました。

    1. 自分の人生の話をされる
      個人的に一番面白いパターン。時代が時代なので、満州に生まれた人の話とか戦争の話を聞けて結構面白い。また、都内のデイサービスに通っている時点で察せられる通り、利用者もそれなりに「勝ち組」なので、子どもや旦那の自慢話とかも多い。
    2. こちらの話を延々と聞いてくる
      これも話しかけてくれるだけかなり楽。ただし5分くらい経ったら同じことをもう一度聞かれる。私は名前の読み方が珍しいので、大体はまずそれで盛り上がる。あとは地元、大学、兄弟姉妹のことなどについて聞かれ、親孝行で将来が楽しみだねといった嬉しい言葉をよくかけてもらえました。
    3. 知育玩具で一緒に遊ぶ
      簡単なパズルとかを一緒に遊ぶ感じ。これも話題が決まってるので楽。一度だけどう考えても知育の範囲を超えているかなりガチのジグソーパズルを遊ぶ機会があって、利用者を置いてけぼりにして一人で楽しんでしまいました(笑)
    4. そもそもあまり話す気がない
      こちらから話題を振ってみても面倒そうな反応をされる方もいて、そういう方にはお互いのためにあまり話しかけませんでした。

    こんな感じで延々と人と話すだけでしたし、正直5日間と言いながら、最初の2日間で大体の業務内容は見せてもらえたので、5日間もやる必要があったのかというのがまず微妙なところでしたが、まあそれなりに楽しめました。

  • 読書日記「あれは子どものための歌」

    明神しじまさんの「あれは子どものための歌」という本を読みました。地元に帰省中に何となく本屋で手に取った本で、特に深い理由があって読み始めた訳ではないですが、面白くてすぐに読み切っちゃいました。

    本のあらすじ

    この節はネタバレしない範囲で本のあらすじについて書きます。次の感想の節では思いっきりネタバレします。

    世界観の繋がったいくつかの短編からなるお話で、中世ヨーロッパをベースとした剣と魔法の世界が舞台となるファンタジー作品で、基本的には世の理に背く方法で人々を誘惑する魔法使いワジが引き起こす不可解な事件を、商人のフェイやカルマが各々の思惑や目的のために解決していくという形式でストーリーが進んでいきます。ちなみにタイトルの「あれは子どもための歌」は収録作品の一つのタイトルで、奇麗な歌声と引き換えに賭けに絶対に負けない力を手に入れた少女に関する話です。このタイトル自体も実は大きな伏線になっています。

    ファンタジー要素だけでなく、謎があってそれを解決していくというミステリー要素も含まれていることがこの作品の特徴の一つであり、特に物語後半で散らかった伏線が鮮やかに回収されていき、断片的な話題が一つの筋の通ったストーリーになる様は見事であると同時に作者の手腕を感じさせてくれる作品です。

    感想

    ここからは特に忖度なく勝手に感想を書きます。

    率直に言えば世界観が素晴らしかったです。しかし一方、この作品は世界観が非常に作りこまれている割に、まだそれを活かしきっているとは言えず、恐らく作者の方もまだまだ書き足りないのではないのかと思いました。作者の方はこれ以外に特に作品は公にしていないみたいでしたが、あとがきの部分でも執筆に対する情熱が失われていないみたいで続きがあってもいいと期待できそうなので良かったです。

    しかし、いくつか満足できなかった点もあります。まず、ファンタジー要素とミステリー要素の混合について、ファンタジーにミステリー要素を取り入れてしまうと、ミステリーに不可欠な巧妙な論理が、魔法や超常的な力といったファンタジー要素によって破綻してしまう可能性があります。本作品はこのバランス感覚がとても良く、確かに魔法が本質的に事件のトリックにかかわるものの、それがミステリーに必要な論理を崩さず、トリックの幅を広げる方向に作用しています。これは見事だと思いましたが、反面そのような難しい状況で、複雑な論理を紡ぐことがとても難しいことは想像に難くなく、実際謎解きパートは割とあっさりしていてミステリー要素はかなり薄めに感じました。そのため、個人的にはこの作品はミステリーではなく、ファンタジー作品として位置づけた方が適切なように思えました。

    一方でミステリー作品というのは、作者の考えたロジックをキャラクターが遂行するという性質上、キャラクターが作者の駒になり、生命が宿らないように感じてしまうという事態はそれなりに起こると思います。個人的にはこの作品でもこの現象が生じており、フェイがこれに該当するように思いました。フェイは目的のためなら嘘も平気でつけるような狡猾さと、人殺しを心から嫌い、平和のためなら自分の命も惜しまない正義感をもった魅力的な人物として描かれていることに間違いはありませんが、彼の目的意識が戦争を止めたい正義感以上のものがなく、人間になりたいという非常に分かりやすい目的をもったカルマと比較してかえって安っぽく感じられたため、事件を解決するために呼ばれた便利な探偵くらいの立ち位置になってしまったといった感じでしょうか。

    ちなみにカルマに対しては全くそんなことはなかったです。作者のあとがきにもありましたが、カルマが主軸となって構想が得られたみたいなので、フェイやキドウの扱いは難しかったのでしょうか。なお、この物語は主役がフェイ、キドウ、カルマの3人挙げられていますが、キドウはかなり空気でした。

    また、物語は大団円として幕を閉じた形になり、フェイの物語はある程度完結したように見えましたが、ワジやカルマの物語はまだまだ続きそうだったので続編に期待という感じです。

  • このブログについて

    簡単にこのブログの趣旨や始めた動機付けについて書いておきます。

    ブログを始めた理由

    このブログは主に以下の3つの理由で作成しました。

    1. Webに関する技術的興味。
    2. 文章を書くのが好きなので公開したくなってきた。
    3. 高品質な日本語の記事の提供。

    1つ目はシンプルで、単にWeb系の技術に関する興味があったからです。これは現時点でかなりの度合いを達成できたと思います。実際、このブログはWordPressをVPS上で動かしていますが、それだけでなく採点システムを作成するにあたって、フロントエンドにNext.JS/React/TypeScript、バックエンドにFlask、サンドボックスツールとしてDockerを使用し、図らずともモダンなWeb開発におけるツール群をそれなりに学習できました。生成AIの台頭のおかげで、こういった技術を学ぶことの敷居が下がったことが非常に大きく、かなり効率よくこれらの技術スタックを学習することができました。

    2つ目もわかりやすく、個人的に文章を書くことが好きだからです。昔から文章を書くこと自体はそれなりにやっていて、自分の文章を書いても誰かに見られることが恥ずかしかったり、そもそも見られたいとも思わなかったのですが、年が経つにつれて面の皮が厚くなってきて世界中に自分の文章を晒すことに何のためらいも覚えなくなったので公開することにしました。特に数学の記事は自分の理解のためにそれなりの分量が書かれているので、それらも随時整備して公開していけたらと思います。

    3つ目の理由は、先述の通り昨今はAIのおかげでWebページの作成も含めたコード生成への敷居が下がっている反面、専門性が浅く質の低いような記事がAIにより安易に大量生成され蔓延するようになってきました。これは数学や計算機科学のようなアカデミックなフィールドでも例外ではなく、例えば数学の記事なのに一切数式が出てこずに、証明のお気持ちだけが書かれているような、恐らくAIが書いたと思われる品質の低い記事が徐々にですが、増えてきているように感じます。そのためこのブログではせめて自分の専門分野だけでも、質の低い記事の氾濫を防ぎたいという思いで書くことにしました。そのためにまずは離散数学やグラフ理論の記事の充実を図っていきますが、特にこのブログの哲学として、数学的な厳密性を保持しながらも計算機科学的な側面の記述を忘れずに、数学・計算機科学の両方からのアプローチを心掛けて行きたいと思います。